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Hayama diary
インテリアと音と映像と Cadenzaの10年
古きよき蓄音機から最新ホームシアターまで、葉山の奥深さを感じさせる、峰松夫妻のライフスタイル空間。
オーディオのルーツともいえる蓄音機から、最新鋭のAV機器まで、様々な音・映像の楽しみを、豊かな空間のなかで提案する「Cadenza」。
代表の峰松啓さんは、ビング・クロスビー「峠の我が家」のSP盤で出迎えてくれました。
竹製の針を専用のハサミでカットして、ハンドルでゼンマイを巻いてから、竹針をレコードに落します。クロスビーの力強い歌声が部屋中に響きわたりました。電気を使わない蓄音機の音には、時代の空気がそのまま封じ込められているようでした。
Cadenzaの1階には、エジソンが発明した蠟管式の蓄音機や、かつて家一軒と同額といわれた高級蓄音機「ビクトローラクレデンザ」、アンティークのオルゴールなど、オーディオのルーツともいえる機器を試聴できます。100年近い時を刻んできた機器達は、いい音とは何かを身をもって教えてくれました。
時代はくだり、電気式のオーディオ機器が登場すると、蓄音機時代の優美な雰囲気は失われていきます。そのなかで、クラシックなインテリアにあうオーディオ機器の開発に力をいれたのが英国「QUAD(クォード)」社(1936年創業)でした。
1階に展示された葉山在住のドールハウス作家・大庭ひろこさんの作品「チェルシールーム」はアーツ&クラフツの時代をほうふつとさせます。シャンデリアや家具、コーヒーセット、飾り物の人形、カーテンなど、精巧な作りと時代考証にもとづいたコーディネートに圧倒されました。
音のためなら見かけは気にしないというマニアが多かった時代から、峰松さんは機器とインテリアの調和を訴え「サウンドファニチャー」の開発を、大手家電メーカーで手掛けてきました。その成果を空間へとひろげたいと10年前ここ葉山にCadenzaをオープン。ユーザーや建築家などの依頼をうけ、ホームシアターやオーディオルームを築き上げる「インストーラー」の第一人者として活躍しています。
オリジナルのサウンドファニチャーを展示した2階ショールーム。マジックミラーを使って鏡の中に液晶モニターを隠すなど、インテリアとテレビ、オーディオ機器を調和させる様々な工夫を見られます。
こちらも大庭ひろこさんの作品。さわやかなアメリカンアールデコ風のインテリアからは、自立した女性たちが活躍しはじめた、エレガントな時代の空気を感じました。
2階のシアタールームでは、4K最新プロジェクターよる140インチ(等身大画面)を体感できます。ホームシアターにオススメの椅子や、空間の雰囲気を盛り上げる照明演出の提案もされています。
キャビネットなどの家具は、北海道・旭川のカンディハウス製。スピーカーを仕込んだルーバーの形状までオリジナルで製作されています。フルハイビジョンの4倍超の解像度を持つ4Kプロジェクター(ソニーVPL-VW1000ES)で、迫力ある戦闘シーンを鑑賞。映画館よりもキレイに観えました、映像の美しさはここ4〜5年で急速に進歩し、低価格化も進んでいるそうです。
3階の和室にて。「音や映像の楽しみ方を、建築家やデザイナーにもっと知って欲しい」と峰松さん。和室の左官材や自然材料は、意外にも音を聴くのにぴったりとのことでした。
よい音は部屋の条件によって左右されることが、長年の研究によって明らかになってきています。現段階での理想的な部屋の寸法比は、長辺1:短辺0.845:天井高0.72に近い比率のものとされています。一般的な6畳間はこれに近い比率で、8畳間のような正方形の部屋は反響も多く、音のためには避けた方がいいようです。よい音環境は、音楽だけでなく、会話や日常の音の感じ方にも影響します。音環境も設計の大切な要素であると分りました。
孟宗竹の筒で作ったお手製のスピーカーを使い、キャビネット内にはサブウーハー(低音用スピーカー)を仕込んでいます。シンプルな構成で驚くほどいい音を聴き、部屋次第で音響が変わることを実感。
3階リビングダイニング。峰松夫妻はここで暮らしながら、地元・湘南ビーチFMのDJをつとめたり(現・ファンクラブ会長)、犬の散歩で漁師との交流を深めたり、1階をカフェ空間としてリスニング会「Music By Candle Light」を開催したり、葉山の生活を楽しみながら、音や映像のあるライフスタイルの豊かさを発信しています。
初版発行以来、4刷りを重ねた峰松さんの「ホームシアターハンドブック」(ステレオサウンド刊)は、音や映像を愉しむ空間づくりのバイブルとなっています。元々は月刊誌「室内」の連載でした。
激しい価格競争などにより苦況に立たされている家電業界。しかし本当に、ユーザーは安い製品ばかりを求めているのか。それは違うと峰松さん。これからの豊かさを創造するための、建築家やデザイナー必須の知識が「Cadenza」に示されていました。
湘南国際村
夢のきれはし
葉山町と横須賀市にまたがる広大な山地に「21世紀の緑陰滞在型の国際交流拠点」として、平成6年に開村した湘南国際村。逗子駅からバスで約30分。間門沢調整池バス停から10万本のツツジを植えた丘を登ります。
合宿型の研修・会議・情報施設「IPC生産性国際交流センター」。設計は山下設計+シーザーペリ&アソシエーツ
ゴールデンウィークにあわせ「湘南国際村フェスティバル」が開催されました。丘の上からは、葉山の海を一望できます。国際村には、教育機関や研究所、企業研修施設のほか、住宅地も開発されています。
湘南国際村センターでは講演会や朝市がひらかれました。横須賀市の就労継続支援B型事業所「あすなろ学苑」は、焼きたてパンやジャムを出品。「よこすか食べるカレーらー油」は、横須賀おみやげコンテスト銀賞。ジャム・焼き菓子類は厚生労働省「至福のお届け」優秀賞を受賞しています。
湘南国際村センターから見た「地球環境戦略研究機関(IGES)」。アジア地域の持続可能な発展をめざす国際研究機関のようです。設計は日建設計。
三浦の天草を使った「珈琲ところてん」(湘南食料)。
コンデンスミルクはお好みで。
創業明治35年。宮家御用達の青果店だった山田屋のお総菜。
裕次郎も愛した旭屋牛肉店「葉山コロッケ」そのままで美味しい。
朝市は湘南国際村センターで毎週日曜日にひらかれています。三浦半島のとれたて野菜や花、漬物など。農家直売の市場です。
国際村周辺にも、野菜畑や「葉山牛」の牧場が点在しています。
湘南国際村の開発は予定よりもエリアがしぼりこまれ、山や谷をくずしてすでに整地したエリア(現在はほぼ更地)を、以前のような豊かな森に再生し活用しようという「めぐりの森」プロジェクトが進行中です。市民・行政・企業のコラボレーションにより、植林や土壌づくり、森林資源の活用など、様々な試みが行われています。
葉山にて 英国ライフスタイルでくらす
横浜の根岸に生まれ、30年前に葉山に移り住んだケイティー恩田さん。英国アンティークでまとめた自宅を舞台に、
英国家庭料理やテーブルデコレーション、フラワーデザインなどを通じ、英国流のライフスタイル提案を行ってきました。
ケイティーさんは昨年、葉山かやの木テラス(一色地区)に小さな生活骨董店「KATY'S HAYAMA」をオープンしました。
店内には、実生活につかうのにちょうどいい感じの、アンティークな小物や食器、アクセサリー、食料品などがならびます。ディスプレイに映えるブルーの食器は、17世紀から親しまれてきた「ブルー ウィロー」。中国に伝わる悲恋伝説をモチーフに、楼閣や池に浮かぶ小舟、風にゆれる柳、恋人同士を表す二羽の鳥などが描かれています(実は英国で創作されたストーリー)。ケイティーさん自ら英国にでかけ、自分の目で品物を選んでくるそうです。アンティークのジャムやクリームの小瓶も素敵です。
ケイティーさんの著書「英国びいき、葉山暮らし」には、葉山での毎日を英国家庭料理のレシピとともに綴っています。「葉山には、数百年前から続く旧家の人、米軍関係者、教師やビジネスマンの外国人、別荘の人、そして最近越してきた新しい人と、様々な住民がちょうどよくミックスされて、独特のおしゃれな文化を生んでいると思います」とケイティーさん。
今日も葉山の一日がゆっくりと暮れていきます。ケイティーさんも店じまい。温かなライトが家に灯り、家族団欒のひとときがはじまります。
葉山をベースに生活を支えあう家具を
東日本大震災の起きた2011年3月。葉山に一軒のインテリアショップ「Basis」が誕生しました。
基本に充実な家具をオーダーでコツコツと作っていく。廣田耕人さんの静かな挑戦のはじまりです。
「Basis」では葉山芸術祭(4月21日〜5月13日)にあわせ、ファッションデザイナー鴨(かも)邦昌さん(Airroom products)と鞄職人の行田和裕さん(ko'da-style)をむかえ「3」joint exhibition canvas・oak・oxford展を開催中。ジャンルは異なるものの、どれも生活のベースを支えてくれるアイテムでした。
葉山在住の鞄職人・行田和裕さんは、帆布製のバッグを注文にあわせ一点ずつ制作しています。L.L.Beanのトートバッグ改造をきっかけに、鞄職人の道に入ったという行田さん。頑丈で使いやすい鞄は、半年待ちでも欲しいというファンが多いようです。
毎日着ても飽きない心地よさを追求した鴨 邦昌さんのコットンシャツは、着ていることを忘れそうなほど軽くしなやかです。「Basis」の店内は2人の作品とジョイントし、生活感をリアルに感じる空間となっていました。「インテリア業界に入った時から、自分の店を持つことを目標としていました」と廣田耕人さん。TIME & STYLEから独立して1年。葉山の人々にBasisのライフスタイルがどう受け入れらるか。その真価を問われる日々がつづきそうです。
[ UNDER MY SOUL ]
あちこちから手が伸びて来た。ガンを抜く間もない。袖をまくられる。ボスがかけた保険。
お約束の注射。頭の後ろを金属の棒で殴られたような衝撃。腕を擦る。背中を突き飛ばされた。くそ。正気でいられる自信はない。が、物事の本質は一つだけだ。それを見失う訳もない。急速に喉が乾いていく。同時に …… 口の中に大量のカミソリを入れられたような ……
剣呑な金属の味。
………… 。
………… 。
何か飲むものを。
[ NIKE ]
白く大きな翼を持った女。肩甲骨を動かすたびにその翼が動く。トレイからグラスを受け取り、どういうカラクリだ? と聞いてみる。カラクリ?そんな高級なものじゃないのよ。ぬ、ぬ、縫ってるだけ。だってあたしは縫いぐるみだから。分かる? ぬいぐるみ。女は呟きながら、ほ、欲しい?と右手につまんだ細いガラスの棒を振って見せた。中には蛍光の液体。首を振る。あ、あんた名前は? 女がガラスを折って中の液体を赤い舌の上に垂らす。『気狂い』。ふうん。私、ニケ。 …… そうか、ところで ニケ、お前空を飛べるのか? 怪鳥ニケがけたたましく笑う。笑いながら奥のドアを指差した。『気狂い』はニケを押しのけフロアの奥に進む。ドアを開けた時、背中に投げつけられる罵声。お前は飛べるのか? お前は飛べるのかよ? そうだなニケ。それができないからここにいる。俺もお前も。
[ SEE MORE ]
白い廊下。床、壁、天井すべて白い。その「白」に染みついたような男と女。小太りで全裸の女とその背に跨った卵のような小男。男が『気狂い』に気づき話しかける。だからよ、ウェルギリウスはリンボを出てダンテを救出に行くわけよ。卵男を乗せた女はペタペタと辺りを歩きまわる。なんでだろうな?なんでそんな事をする?あんたはどう思う?けなげだろう、そんなのってさ。小太りの女がこちらに気づき、顔を向けて言う。もっと私を見てよ。私の哀れをもっと見てよ。俺が話してんだっ。やにわに卵男が怒り始める。自分のサスペンダーを自ら引っ張っては離す。パチッパチッ。その自分を鞭打つ様は滑稽を通り越して奇妙なダンスのようだ。どす黒く赤く膨れ上がる顔。ついに卵男は、その短い足の踵を女の脇腹に打ち付け始めた。オウッオウッ。女がえずく。女の麻痺の震えに男がその背の上で蠕動する。オッオッ?表情がガラリと変わる。嬉々とした顔を『気狂い』に向ける。女の身震いに合わせてブルブルと震える卵男。あからさまに興味を無くした目をこちらに向ける。ボスが待ってるぞ、早く行け。俺は忙しいからな。これからこいつを慰めなきゃならない。こういうのをなんて言うんだ? …… メンテナンスだ。そう。 …… フェードアウトする卵男の声 …… メンテナンス。
[ RAGUE ]
覚醒。青いプール。水の底の照明が静かに揺らめく。芝の上のプールサイドカウチ。ボスがこっちを見つめている。急に頭が冴えてきた。PDXか。強烈な幻覚作用のわりには持続時間が極端に短い、今売り出し中のドラッグ。常習性が強いとも聞いている。虫の声が聞こえる、いや、まだ薬が残っているのか …… 。ボスに近づく。まだ30代のギャングスター。膨れた腹の下には分厚く強靭な筋肉が隠れている。人種のるつぼ、この島の生態系。そのトップに君臨する男、ラグ―。
[ POOL BLUE ]
闇の中から音も無く現れた女が『気狂い』に黄金色の液体の入ったグラスを渡す。受け取った。しかし、彼女の手はそのまま空中に残っている。とぼけてそれを見つめ返す『気狂い』。やがて焦れたようにヒラヒラと舞う美しい手のひら。「ガン」ボスの声。外見に似合わず甲高い声。肩をすくめて腰からUSP45を引き抜く。安全装置を確認する女。長い指が素早く動く。「悪かったな、居場所は明かさない …… 。俺の主義でな」「もうすでに、シアターからは遠く離れているということか」「まあ、そういうことだ」いつの間にか女が姿を消している。ボスと二人きり。いや、そんなはずもない。あちこちで『気狂い』に狙いを付けている無数の目。「お前の事は調べさせてもらった」「 …… 」「ジャパニーズ。幼いころ周りで沢山の死者が出た。そのせいでドラッグを憎んでいる。そして、その出もとを嗅ぎまわっている潜入捜査官ってところだ」「古い情報だ。今は組織を抜けている」「嘘だね。その体臭はPOLICEだ。俺はな、鼻がきくんだ。比喩ではない。」聞いた事がある。ラグ―の鼻は嗅覚において常人の域を超えている。「犬並みだそうだな」「そうだ …… 」しかし、と言ってラグ―は空を見上げた。冴え冴えと光る月と、ばらまかれた満点の星が広がっているのだろう。つられるわけにはいかない。ラグ―の顔の20cm手前に目の焦点を合わせる。視界の稼働域を最大限に設定する。「ああ、その目は知ってる。日本のブドウカがよくそれをする」「そうか」「いや、話の続きだ。そう …… しかし、わからないことがある。」「なあ、俺の話をさせてくれよ」ラグ―は口の前に人差し指を立てた。しー。目が笑っていない。黄色く光っている。「ナッツ、お前は、すでに死んでるだろ? 」
一瞬にしてプールの水が干上がる。
油絵の塗料が剥げ落ちるように、
世界が崩れていく。
葉山暮らしをそのままお店に
風早橋バス停の目の前に、昨年秋にオープンした古道具屋「Wakka」
逗子駅からバスで10分ほど、風早橋バス停前の「Wakka」は、店主・磯田夫妻の暮らしぶりを、そのままお店にしたような古道具屋です。葉山芸術祭にあわせ「50 plants」展を開催中でした。
3年ほど前、子どもたちを自然のなかで育てたいと葉山に移住した磯田夫妻。自分達で店の内装をコツコツ作り上げ、昨年の秋にオープンしました。若い人も気軽に使える食器や家具、小物、敷物などと合わせ、店内に散りばめられた「小さなもの」たちが、Wakkaの世界をつくりあげていました。奥からじっと店内を見つめるのは、20年かけて集めたという福助です。
子育てをしながらお店を切り盛りする磯田さん。森山神社でひらかれる土曜朝市にも参加しています。
葉山芸術祭の企画「葉山モバイル・ハウス・プロジェクト」で制作された移動式屋台。多肉植物を中心とした寄せ植えは「すこし高台ショップ」とのコラボレーションです。
葉山の海はシーカヤック日和
ゴールデンウィークのさなか、NPO法人オーシャンファミリー(前号60ページ参照)で、親子シーカヤック体験講座がひらかれました。
都心から近いマリンスポーツのメッカとして知られる葉山の海。ヨットやサーフィン、ウィンドサーフィン、水上オートバイなどなど、
愉しみ方は様々です。シーカヤックなら親子一緒にひとつの船にのり、海洋観察をしながらゆったりと海の時間を過ごせます。
まずは葉山セミナーハウスに集合して、カヤックについてのレクチャーの後、身支度を調えます。海面は日差しが強いので日焼けに注意。飲料水も用意します。ライフジャケットは大人も子どもも必須です。
セミナーハウスから歩いてすぐの長者ケ崎は、岬に守られた波のおだやかな海岸です。キャプテンまいけるの指導のもと、パドルの漕ぎ方を浜辺で練習してから海に漕ぎ出します。最年少は2歳の女の子。
初挑戦のお父さん、お母さんもあっという間に上達して、海面をスイスイ進みます。海面から突きだした岩礁を眺めながら、岩と岩の間をすり抜けて行きます。磯場を海からゆっくり観察できるのもシーカヤックの魅力です。
長者ケ崎の小さな半島に到着。親子で磯の生き物を観察します。シーカヤックなら、歩いては行けない磯にも上陸できます。
誰でも楽しめるスポーツですが、風や潮の影響など、インストラクターの指導で正しい知識を身に付けることが大切です。
長者ケ崎で遊んでから、元の砂浜に戻ります。約2時間のシーカヤックハイキング。子どもたちの胸には、どんな思い出がやどったでしょうか。十年、二十年後に、この体験を思い起こすこともあるかもしれません。葉山に親子で暮らすなら、シーカヤックを楽しまなくちゃもったいない。そう感じさせるイベントでした。
葉山の地で、人をつなぎ文化をつなぐ
-葉山文化園
錚々たる著名人の集う会員制クラブ「葉山文化園」。夏には100鉢以上の蓮が咲きほこり、近隣の人達を楽しませています。
15年ほど前「 IT化のすすむ時代だからこそ、人と人のつながりを大切にしたい」という大出一博さん(ファッションプロデューサー)の呼びかけに、各界の著名人が賛同して誕生した会員制クラブ「葉山文化園」。縦しげ格子を多用した設計は、隈 研吾さんによるもので(「森/スラット」1999年)、定期的なセミナーや展示会を開催するホール宿泊施設などを備えています。葉山芸術祭(4月21日〜5月13日)に一般公開され、中野恵子さんの「和モダン」をテーマとしたインテリアグリーンや、大出一博さんの花の写真展がひらかれました。
6月6日には、鎌倉・鶴岡八幡宮の正式奉納行事として大出一博さん演出による着物ショー「日本の心・日本の絆」が開催されます。チケットの売上げは東日本大震災支援金となるそうです。
枕木を並べたようなデッキから、庭木の緑と一色地区の山並みを見渡せます。隈研吾さんが格子をつかい自然材料の魅力を引き出すスタイルを確立した初期の作品ともいえます。
創作ギャラリー 蓮REN
「葉山文化園」に隣接するギャラリー蓮では、お香と書と印をテーマにした展示やワークショップが開催されていました。
香アーティスト渡辺えり代さんによる「聞香(もんこう)」をテーマにした展示は、今の暮らしにあった香道のスタイルを提案しました。
ギャラリーの2階では、生活のなかで愉しむ「書」をテーマとした、書道家・小林桃子さんによるワークショップが行われていました。
書家は古典を臨書(模写)することで、書を理解していくと小林さん。上の書は、藤原 佐理(すけまさ)による「国宝 離洛帖(りらくじょう)」の臨書。関白・藤原頼忠にあてた詫び状で、墨の付け具合を計算し、同じ字やフォルムが重ならないよう、文字をつぶしたり伸ばしたり、様々な工夫を凝らしているそうです。
インテリアに合わせ書の装丁を自分なりにはじめたという小林さん。骨董市で見つけた古裂などを利用して、空間と書を調和させた装丁を愉しんでいるそうです。左は老子の言葉「玄 玄」(ものごとの始まり)。
巻紙の手紙は、失敗したところを切って、新しい紙をのり付けして続けられる。ぜひ気軽に使ってみて欲しいとのこと。郵便事情の悪かった頃には、無事に届くよう「魚」の封印を押す習慣がありました。「鳥」の封印は早く返事がほしいという意味だそうです。
『甘〜い生活』
BC工房 主人 鈴木 惠三
「ふじのの赤ひげ先生」こと、国力先生から糖尿病を宣告された。
「どうしましょうか?」が、クチグセの国力先生が、めずらしくハッキリ言ったのだ。
「でも、まあ、今さらあたふたしても仕方ないでしょう。じっくりやりましょう。」
オイラは山本周五郎の「赤ひげ診療譚」が大好きだから、
いつか赤ひげ先生と呼べる医師と出逢いたかった。
オイラは、国力先生に、なんとなく「赤ひげ先生」のニオイを感じてしまったので、
勝手に赤ひげ先生と呼ぶことにしている。
オイラは、食事療法に目覚めることにした。
● 朝は、パン1枚と野菜サラダとフルーツ
● 昼は、サトイモ3ケと漢方薬のジャムゥ
● 夜は、スープと野菜サラダとビール1杯とオニギリ1ケ
ジャワの工房暮らしのメニューである。
今までと決定的に違うのは「デザート」だ。
ジャワのデザートは、揚げた甘いものが多い。
「クエバンドン」「オンデオンデ」が、オイラの好物である。
いつも屋台で買ってきて、夜のデザートにしてきた。
この15年のデザート三昧が、きっと糖尿病を引き起こしたに違いない。
ミラノでは、たっぷりのジェラート。
シンガポールでは、氷あずき。
チェンマイでは、マンゴースティッキーライス。
そしてジャワでは、クエバンドン。
世界中どこへ行っても甘い誘惑ばかりだ。
おいしい食事の締めの、おいしいデザートは、はずせない。
おいしいデザートこそが、文明だと思った。
メインディッシュより、前後が大切。
デザート文化の時代がやってくると信じていたオイラだ。
だが、ここにきて、仕方なく「デザートなし宣言」。
甘いデザートなしの日々を、どう楽しむか?
甘い誘惑には、積極的にのってきたオイラにとって、地獄の日々が始まる?
この1週間の実験で感じたのは「それほど苦痛じゃない。」である。
むしろ、食事がおいしい。ゆったり少しずつ味わえる。
食欲というより「食愛」のキモチになってきた。
いとおしいキモチで、感謝でいっぱいになる。
やっとオトナになった気分である。
いつもお世話になっている漢方薬屋のオヤジに、糖尿病スペシャルの「ジャムゥ」を調合してもらった。
1日2回、毎日飲んでいる。
苦さ十二分で、甘さなんていう味覚を忘れてしまいそうだ。
でも、「甘い生活」をしつづけてきたオイラの「甘い性根」は、
多分、変わらないだろうから、そのうちカロリーオフのおいしいデザートを見つける?
まあ、それも良し。
残りの人生を、オイラのいいかげんさと、いい折り合いをつけて、もうしばらく生きながらえたいもんだ。
リビングデザインセンターOZONE
収納から考える 水まわり空間
収納と水回りの関係を考える展示会とイベントが、6月26日まで、リビングデザインセンターOZONE(西新宿)で開催中です。
レザルクによるキッチンの提案(平岡さなえさん監修)。背面収納を充実させ、食器から食材、調理家電までを背面に集約したプランです。散らかりがちなオープンキッチンをスッキリさせる工夫が満載です。
オープンキッチンの収納はどうしても不足しがちです。収納量を補うため、キッチンの近くにストレージのコーナーを設けることも有効ですが、動線が長くなり、調理のたびに行き来するのは不便です。
そこで一見クローゼットのような背面収納に機能を集約すれば、キッチンから振り向くだけで使えるゼロ動線が実現します。このプランでは左から、トールボーイ ▼ 食器収納(扉式) ▼ 冷蔵庫 ▼ 調理家電収納 ▼ 食器収納(引出し式)の順で各機能を配置しています。ここで大切になるのは扉や引き出し金物の機能です。スイングアップ式やフラット式、引き込式の扉を採用することで、扉を開けたままでも動線を邪魔することなく使えます。
背面収納とキッチンの関係は、細部にわたり計算されています。V字型のキッチンには、冷蔵庫前の作業エリアを確保する働きもあります。会場では連動企画「建築家公開コンペ」もひらかれていました。
ARUNAIと平岡さなえさん、OZONEデザインリフォーム&インテリアのコラボレーション作品。洗面・バス空間の提案です。脱衣所の洗濯機(乾燥機能付き)の向かいに下着やタオルなどの衣類収納を設けることで、脱衣所での着替えが便利になります。アウトドアをテーマにしたバスルームは「見せる収納」をとりいれたシックな空間。会期中は専門家による各種セミナーも開催されます(OZONEホームページ参照)。
卓上のきら星たち 第13回 アデリータ太平洋横断記
大原千晴
青い地球を描いた絵を見てください。太平洋を中心とした図です。真ん中に白い点々が列状に連なっているの、見えますよね。これ、海亀(アカウミガメ)のアデリータが実際に泳いだ、その「航跡」です。出発地はメキシコの西端バハ・カリフォルニア半島の太平洋岸。そして到達地は、何と、仙台市の沖合です。ここでたまたま、イカ釣り漁船に釣り上げられてしまった。この海亀のアデリータ、体調50センチほどの頃、メキシコの海辺で捕獲され、これに研究者が発信機を取り付けて、海に放したんですね。その時、捕獲に協力した地元の漁師の娘にちなんで、アデリータというかわいい名前も付けてもらった。きっと雌だったんですね。で、それからの毎日、研究者たちは海亀のアデリータがどこを泳いでいるか、発振器と衛星とGPSとPCの力を借りて、固唾を飲んでその航跡を追いかけていた。
その追跡は三百八十六日目に至って、仙台沖で終わりを告げます。航跡の距離は約一万二千キロ。海亀のアデリータは、一年をかけて、太平洋を横断していたのです。果たして、これはアデリータだけに特別な、偶然のなせる驚異なのか。実は、バハ・カリフォルニア半島一帯には、アカウミガメの産卵地は、見つかっていません。子亀も見つかっていない。見つかるのは皆、一定の大きさに育った亀さんばかり。なので、その生態を探るため、こうした実験が始まった。1990年代の初めのことだったようですから、まだ最近の話です。
研究を続けた結果、太平洋横断は、アデリータだけに限らず、次々と同じデータが挙がってくるようになった。要するにアカウミガメはその習性として、太平洋を横断している。しかも、その生まれ故郷(産卵と孵化)は、どうやら日本の太平洋沿岸らしい、ということが判明してきます。日本で生まれたアカウミガメは、太平洋を渡ってメキシコのバハ・カリフォルニア半島に泳ぎ着き、数年〜数十年その地で過ごし、再び日本に戻ってくるらしい。そういう生態が、徐々に明らかになってきたわけです。凄い!
そのアカウミガメの数が急激に減少している。2004年に発表された研究報告では、このままいけば、今後10年で個体数が半減する可能性あり、とされています。なぜ、そんなに減るのか。バハ・メキシコ半島一帯で、これを大量に捕獲する人々がいるからです。なぜ、捕獲するのか。なかなかむずかしい問題があるのです。
捕獲の主要目的は、食用です。メキシコはスペインから独立した国家です。宗教としてのキリスト教、カトリックが圧倒的な存在です。カトリックの教えでは、イースター前に40日間の断食期間「レント」があり、この間は肉食が禁じられている。でも、魚は許されている。これが伝統です。欧州で広く干鱈や塩鱈、ニシンの燻製やその酢漬けが普及したのも、このレントの大切な食材としてでした。この「魚」に該当するものが、徐々に範囲が広げられていく。で、いつしか、海亀についてもレントの間に食べて良いという判断が下される。以来、スペイン統治下で非常に熱心なカトリック信者となったインディオを中心とするメキシコ人、特にこの半島地域の人々にとっては、「レントの断食期間には海亀を食べる」ことが年中行事の中でも、大きな楽しみのひとつとなっていきます。メインはアオウミガメですが、アカウミガメも捕獲される。ちなみに、アオウミガメは絶滅寸前です。
スペインは宗教改革を経験していません。恐怖の異端審問が徹底された歴史で知られる国です。そのため、スペインが「征服した」南米諸地域に広まったカトリックの教えは、中世のキリスト教がそのまま持ち込まれたかのような側面がある。メキシコの場合も同様で、日常生活の中に宗教が深く入り込んでいて、様々な宗教儀式やしきたりが今も盛んに行われています。「レントにはウミガメのスープ」もまた、そういう「しきたり」のひとつになっていて、そう簡単には止められないのです。海亀の捕獲禁止の法律ができ、懲役刑を含む厳しい罰則が定められたにもかかわらず、密猟者が跡を絶たない。これに対して海亀研究者や自然保護団体は2002年頃から、カトリック教会に対して、この習慣を止めさせるように働きかけを始めます。やがて、この運動がひとつの成果をあげます。現ローマ教皇ベネディクトゥス十六世が、バチカンからの放送の中で、公式にメッセージを発するに至ったのです。「レントの期間に海亀を食べる行為はカトリックの行為として相応しくない。この行為を抑えることで、海亀の個体数の回復を図らねばならない」。教皇自らの訴えは、カトリックの国メキシコでは重く受け止められているようです。
さて、他民族の文化と伝統に一片の敬意も払わない、傲慢で過激な反捕鯨運動で悪名高い団体シーシェパードの代表が、最近ドイツで身柄を拘束されたというニュースが伝わりました。子供の頃から渋谷のくじら屋でクジラを食べ続けてきた私は、それこそ拍手喝采です。しかし、その一方で、いささか日本中心に考え過ぎていたかもしれない、とも思い始めています。食習慣の違いを原因とする異文化間の摩擦は、人の心に棘のように痛みを感じさせるところがある難しい問題です。シーシェパードは許せない、しかし …… 。
海から食べ物がやってくる 豊饒の「天神島」
佐島漁港に近い天神島。横須賀市の保護地区として守られた海は、昔のままの姿を残しています。
天神島臨界自然教育園は、北限の「はまゆう」で知られています。生物の持ち帰りは禁じられているため、浜辺には、強風によって打上げられたワカメやヒジキ、貝類があふれていました。縄文人達は、こうした海の恵みを採取しながら命をつないだのでしょうか。
デザイナー・山田長幸さん(前号参照)主催のバーベキューパーティ。静岡のデザイナーたちや料理研究家、建築家、家具制作者など多彩な顔ぶれが揃いました。佐島で仕入れた魚介類でパーティは大盛況。海の幸が人々を幸福にするのは、縄文の昔から変わらないようです。
葉山の子どもたちへ 祭の心を伝える
夜7時頃、森山神社の「一色会館」に数十人の子どもが集まります。守谷敏夫さんの指導による、お囃子教室の子どもたちです。
御用邸近くの一色地区に、1200年以上前から続く森山神社(正式には森山社)があります。御祭神の「奇稲田姫命(クシナダヒメノミコト)」は農業の神であると共に、ヤマタノオロチ伝説にまつわる須佐之男命(スサノオノミコト)の妻としても知られています。
8月の例大祭に行われる「世計り神事」は天候や作柄を占う神事で、海の近くにありながら農耕の盛んな地であることを示すそうです。
社殿へ続く階段の脇は、めずらしく段々の観客席になっています。その向かいに建つ「一色会館」は、普段は集会やお囃子の練習場に使われ、お祭りの際は、戸を開放して舞台にもなる仕組みです。
「一色地区のお囃子も、一時期途絶そうになった」と指導者の守谷敏夫さん。今から40年ほど前、高度経済成長によって様変わりした日本では、祭を継承する習慣もすたれていきました。このままでは三浦半島のお囃子も高齢化で自然消滅すると感じた守谷さんは、子どもたちを集め教室をはじめました。今では2世、3世も参加し、口コミで新しい住民の子どもも増えています。
子ども達の練習は、付け太鼓からはじまり、次に大胴を習い、3年ほどかけて一人前になってから、笛、鉦(カネ)へと進むそうです。
「すけてんてんこら すけてんてんてんてんてん しとすくてん」と書かれた独特な楽譜。太鼓や笛、鉦の各パートが、ひらがなで表されています。「まずはこのフレーズを憶えます。各パートを全て理解しないと、自分のパートはできません」と守谷さん。実はお囃子には楽譜はありませんでした。しかし、指導者が変わるたびに曲のアレンジも変わってしまうので、守谷さんは三浦半島に伝わるお囃子をのこすため、自ら楽譜を制作しました。教室で習う9曲を全てマスターするには10年もかかるそうです。
森山神社では日本でも珍しい、33年に1度だけの「三十三年大祭」が千年以上前から継承されています。一色から7kmほど離れた小坪の須賀神社から、須佐之男命が森山神社の奇稲田姫命を訪ね、数夜を共にするというロマンあふれる神事です。前回は平成8年9月に開催され、小坪から運ばれた御神輿が森山神社の御神輿とともに葉山の町を練り歩きました。次の「三十三年大祭」は約17年後。大人になった子どもたちは、どんなカタチで祭に関わっているでしょうか。